笑う黒犬の憂鬱

妻をなくした黒犬が這い回る日常を綴っています

追想57「眠り姫」

<2017年7月21日>


20回目の結婚記念日だった昨日

定時で仕事をあがった僕は

妻への贈り物を探す


「記念日には一緒に食べよう」って

約束していた「国産うなぎ」も

どうやらもう食べられそうな状況ではない


病室に飾る花でも贈ろうかと

花屋に入り鉢植えをえらんだが

なかなかしっくりくるものがない


「何か切り花をテキトーに」と注文した僕に

「奥にも温室ありますよ」と

店員さんが声をかけてくれた


奥の温室で見つけたサボテンの花に一目ぼれ

購入したサボテンの花を持ち妻の病院に向かう




サボテンの花を妻はぼんやりと眺め

久しぶりに薬指につけた結婚指輪を

不思議そうにひたすら見つめていた


ゼリーを二口だけ食べ 妻は眠った

最近の妻は「眠り姫」




ある朝僕が 目を覚ますと

この世界には 君はいないんだね

起こそうとして 揺さぶるけど

君はもう目を 覚まさないんだ


Ah 君はいつの日か

深い眠りに落ちてしまうんだね

そしたらもう目を覚まさないんだね


僕らが今まで 冒険した世界と

僕は1人で戦わなきゃいけないんだね





「なんだよセカオワかよっ」と

僕に突っ込む妻はもういない




眠る妻を ぼんやり眺め続ける日々も

そんなに嫌いではないかもしれない



何故なら僕はまだ

1人ではないからだ


僕は負けないし逃げない

飲む薬の量は増えるが


僕は


負けないし


逃げないのだ

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